生きることは表裏一体

小説の賞を受賞したりなどもしたのでその日、その日で文章を書きます。僕の思った通りじゃなくて読んで下さる方、各々の捉え方で読んでもらいたいです。

秋の声

 伝えようとすればするほど、君には知っていて僕には知らない誰かが何処かで、君と一緒にほくそ笑んでいる気がして今日もまた、僕にとって大切なことを伝えられず終わってしまった。

 僕は君と会う時はいつも心の中で今日こそ大切なことを絶対に伝えようと思い扉を開ける。

僕の左側を歩く君の様子を伺いながら何度も伝えようとしたけれど、草いきれで君の機嫌が少し悪そうに見えたからやめた。すると、君は

かき氷が食べたいと笑顔で僕に言った。機嫌が悪そうに見えたのはただの僕の思い込みだった。いつも、そうだ。大切な事を伝えようとすると頭の中は君に嫌われた僕でいっぱいになり、その勝手な思い込みが言葉の障壁となってしまう。僕は自分自信に嫌いな奴と2人では歩かない、嫌いな奴にかき氷が食べたいなんて言わない、ましてや笑顔で。そんな事を言い聞かせて僕は僕を守りながら保っていた。早く気持ちを伝えないといけない。そう思うと、靄のかかった君との走馬灯が頭を駆け巡った。そして、心の中で僕を留めていた鎖が何かの拍子にプツンと切れた。鎖が切れたと同時に僕は君に大切なことを伝えた。けれど、僕の言葉は遠くの潮騒に掻き消されてしまうほど儚いものだった。それは、当然だ。だって僕にとって伝えたい大切なことは、それはあくまでも僕にとってだけのことであって、君にとっては大切なことではないのだから。入道雲が嫌なくらい綺麗に夕焼けのグラデーションのキャンパスになっていた。