弱人強食
炎天下の中、砂埃に視界を奪われながら監督がこっちに向かって撃ち放つ小さな球を僕は、汗を二の腕の袖で拭いながら取っていた。
僕よりもうんと始めるのが遅かったあいつは
誰が何と言おうとエースでヒーローなのだ。
僕は誰よりも早く朝練に来ていたし、練習中は誰よりも真剣に練習した。放課後は残って自主練もしたし、帰宅後も基礎トレをした。
勉学の方だって疎かにしなかった。
でも、あいつはそこまで頑張らなくても絶対的エースなんだ。全国でも通用する選手だ。
努力では天才を凌駕することは、できないのかもしれない。しかも、あいつはもしかしたら
僕には見えてないだけで、僕よりも何倍も努力しているのかもしれない。もし、そうなら
僕たち凡人は一生砂埃に視界を奪われたまま
人生を終えるのかもしれない。