生きることは表裏一体

小説の賞を受賞したりなどもしたのでその日、その日で文章を書きます。僕の思った通りじゃなくて読んで下さる方、各々の捉え方で読んでもらいたいです。

太郎と龍太郎は岡本と橋本

 僕の尊敬する岡本太郎は言った。「芸術は爆発だ。」この、言葉の深い真意や本当の意味で岡本太郎がどのように思って放ったのかは、分からない。そして、岡本太郎は70年の大阪万博

太陽の塔という幼少期の僕に、とんでもない

衝撃と気持ち悪さを頭の中に投げ入れてくることになる化け物を生み出す。70年の大阪万博では

「人類の進歩と調和」というキャッチフレーズで世界各国から自慢の最先端や未来を見据えた物が一堂に大阪という地に集められた。

しかし、世界中がこの「人類の進歩と調和」に湧き上がっているにも関わらず、岡本太郎

この、「人類の進歩と調和」を真っ向から否定する。そして、真反対の事を唱える。縄文土器が素晴らしいと言った。つまり、岡本太郎は世界でたった1人だけ、70年の大阪万博を否定した男なのだ。しかし、その否定した男の生み出したものが70年の大阪万博の象徴になったのだ。

そして、世界の人々はきっと太陽の塔の見た目に衝撃を受けたが、世界の人々は直ぐにその衝撃を凌駕されることになる。あのインパクトの凄い太陽の塔の中には、「生命の樹」というものがあった。これは、一見人類の進化を表現したように見えるが、本当はもっと深い意味があるようにも思う。そして、この「生命の樹」こそ岡本太郎の言う「芸術は爆発だ。」の本当の意味が隠れている気がしてならない。

岡本太郎は間違いなく孤高の天才だと思う。

しかし、自由と努力。そして人間本来の感性と五感を全て使って生涯を楽しんだ男のようにも感じて、人間臭さを持った近年見ない男だったのではないかと僕は思う。

弱人強食

 炎天下の中、砂埃に視界を奪われながら監督がこっちに向かって撃ち放つ小さな球を僕は、汗を二の腕の袖で拭いながら取っていた。

僕よりもうんと始めるのが遅かったあいつは

誰が何と言おうとエースでヒーローなのだ。

僕は誰よりも早く朝練に来ていたし、練習中は誰よりも真剣に練習した。放課後は残って自主練もしたし、帰宅後も基礎トレをした。

勉学の方だって疎かにしなかった。

でも、あいつはそこまで頑張らなくても絶対的エースなんだ。全国でも通用する選手だ。

努力では天才を凌駕することは、できないのかもしれない。しかも、あいつはもしかしたら

僕には見えてないだけで、僕よりも何倍も努力しているのかもしれない。もし、そうなら

僕たち凡人は一生砂埃に視界を奪われたまま

人生を終えるのかもしれない。

蚊帳の中

 僕の家は高台にある。向こうの景色がよく見えるんだ。橙色に染まる町や暗闇に消されまいと光る家庭の明かり達。同じ町だけど、色んな顔を見せる。でも、その町は世間から隔離された世界で人の内面から異臭が漂う町だ。

その、町から毎週火曜になるとぼくの所にリズミカルなモールス信号が送られてくる。

ツーツツツーツ、ツツー

年齢はそう離れてはいない、名前はシクラメンというらしい。もちろん本名ではなく、ペンネームみたいなものだろう。隔離された世界だから、きっとモールス信号を外の世界に送っている事がバレてはいけないのだ。

彼女はいつも一週間分の出来事をモールス信号で僕に教えてくれる。でも、内容はほぼ毎日同じだ。朝起きて家の窓から箱の外を眺める。そして、僕たちより一食少ない食事をするといっただけの内容だ。しかし、ある日そのモールス信号がいつもの時間になっても発信されてこない。僕は一週間に一度の顔も知らない、いつも内容の同じただのモールス信号なのだからこれといってさほど気にもかける必要が無いのに、モールス信号がいつも通り発信されて来ないと何だが心臓がドキドキする。そんな事を思っていたらモールス信号が届いた。

ツーツツ、ツー

いつもと内容が違う。音を聞いただけでそう思った次の瞬間、隔離された町が大爆発した。

爆発後、そのモールス信号が助けてというリズムを刻んだいたことに気づいた。

何だか分からなかった僕の心臓のドキドキは、

また、形の違うドキドキに変わった。

砂漠のランデブー

 君が何年も、何十年も幸や不幸を踏みして歩いてきた大木の枝に実った真っ赤な果実がこの、砂漠のオアシスと化する。

夜の砂漠は寒いから僕は月明かりの僅かな光と

その周りに散らばる片付けることの出来ない無数の星の中で大木を抱きしめ、温もりを感じる。僕の身体は次第に温まる。そして、砂漠の乾燥した気候が僕の口の中を乾かす。

僕は大木に実った真っ赤な果実を口に運んだ。

すると、今までに見たことない果汁が溢れ出した。その、果汁が僕の喉と身と心を同時に満たした。僕は、眠りについた。そして、また朝が来る。太陽が居座る砂漠は暑いというよりは、熱い。でも、僕はその熱さに一日中耐えて歩いた後に頬張るあの、果実の虜になっている。

あの、果実は他の果実とは違って熟すと美味しく頬張ることができない。僕は、砂漠という狂うようなこの場所で禁断の果実を見つけた。

その、禁断の果実が今は唯一僕の心に寄添い、

身も心を全てを満たしてくれる。

70'S

 夜中に部屋のブラウン管に現れる喧しい砂利道。その、砂利道を白昼夢の中で走る。

その砂利道をずっと進んで行くとアストロラマのドームがある。そのアストロラマには僕の記憶が写されていて、僕の記憶にはいつも砂利道よりも喧しい誰かが居座っている。途中から、アストロラマにはその誰かしか写されない。

僕は、自分の進歩と調和の為にそのアストロラマに向かって月の石を投げつけた。

 芸術は爆発する。なのに、人は自分の本当にやりたい事と漠然とした世間の当たり前とを天秤にかけた時何故か、やりたいというはっきり見えているものよりも漠然とした曇天の靄がかかった方が重くなる。自身の可愛いと思った者が

ある日突然そう思えなくなる。すると、人は危害を加える。人は二面性があるというが、

天井をぶち破って立ちすくむあいつみたいに

三つの顔があるかもしれないし、体内には煮え繰り返った真っ赤なヒストリーがあるかもしれないと、白昼夢の喧しい砂利道に立っていた

スーツ姿にオールバックでネクタイの結び目を

触るのが癖のおじさんが教えてくれた。

素敵やん!!と思った。

 

自分の使い方

 カーテンの隙間から朝日が伸びて、私の眉間を刺す。私は身体に鞭を打って明日には明日の風が吹く、そんな誰かの言葉に上手く乗せられて私は今日も、蠢く教室に向かった。

でも、今日には昨日の風が吹いた。そう、私にとっては今日も明日も何一つ変わりは無い。

いつからかは分からないけれど、クラスメイトの声が騒音にしか聞こえない。この生臭い教室で生き残るには全ての音を遮断するしかない。

先生達は何かあったら何でも言いなさいって言うけれど、じゃあ先生達の全てを見せてほしい。学校の外でも先生は先生なの?

居酒屋では仕事の愚痴を言うんでしょう?

それは、すなわち私の愚痴でもあるのよ。

そんな人に何を相談すればいいの?

何が解決するの?

 私は知ってる。電車は人を行きたい所に運んでくれる。時にはあの世にさえも運んでくれる。

でも、それは片道切符しかない。

今日は何人の人がその片道切符を手に行きたい所へ行ったんだろう。私も片道切符がほしい。

私は明日の放課後、片道切符を手に行きたい所に行こうと決めた。そして、家に帰って最後の晩餐を過ごした後に走馬灯を駆け巡らせた。

そんな事をしていると、妹の笑い声が私の走馬灯を停止させた。妹の目の先にあるブラウン管から明日の電車の運行停止の知らせが飛んできた。私達はいつでも、片道切符を買うことは出来る。だから、人は幸せと不幸を往復するのかもしれない。私は、片道切符を買う事をとりあえずは、明後日にすることにした。

そして、気がついた頃には季節が一つ移ろいでいた。

遠い日になる17時のチャイム

 蝉時雨がアスファルトにまだ少し残りながらも、陽が傾きこの小さな町を茜色に照らしだした頃、僕はとっさんとカンタとたいちゃんと

いつものように、この町唯一の市民プールの帰り道に入り組んだ住宅街を家路へと向かってペダルを回した。その住宅街からは、醤油の匂いが煙りに混ざって僕の鼻まで届く。すると、何故かおかぁちゃんの顔が浮かんだ。僕はより一層ペダルを早く回した。そして、住宅街を抜けるとたこ焼き屋がある。醤油の匂いとはまた、違って今度は油がソースを焼く匂いがする。

僕たちは、一生懸命につま先立ちをしてたこ焼き屋を除いた。すると、金髪の活気のあるお姉さんが「一つずつあげるよ」と言い、鉄板にある落とし穴に落ちてるたこ焼きを慣れた手つきでひょいと爪楊枝にさして、僕たちに一つずつくれた。僕たちはお姉さんに「ありがとう」というと、お姉さんは見た目とは似つかわしくない優しい笑顔を見せてくれた後に、「今日の空すごいね」と言った。僕たちは振り返って空を見た。すると、入道雲が夕日に照らされて

僕たちの顔と同じくらい赤くなっていた。